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第11回春の瞽女唄公演「小栗判官照手姫」の感想です。

感想・ルポ・エッセイ essay

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春の瞽女唄公演をきく

川上 洸


 数年前から瞽女唄の雰囲気が好きになってその空気に浸るだけをたのしみに瞽女唄をきくようになった。
 こどもの頃わが家も瞽女宿をしたことがあるという記憶があり、宿の空気だけをこども心に残していて、初めから唄の文句やことばを聞きわける努力をしていなかったフシがある。
ところが或時突然のように耳がハジけたというのか、文句がハッキリ聞こえた!と思ったことがあり、忽ち瞽女唄の文学世界が際立ってきた。
 今年の春の公演は、「小栗判官照手姫」とのこと、じっくり聞かせてもらおうと期待して出かけた。
プログラムは
1.門付け唄「岩室」      横川恵子 金川真美子
2.瞽女松坂          室橋光枝
3.祭文松坂「小栗判官照手姫」 金川真美子 室橋光枝 横川恵子
4.民謡「新保広大寺」     金川真美子
5.出雲節「謎かけ」      金川真美子 横川恵子
6.発ち唄 伊勢音頭くずし   室橋光枝
以上
フルコースのプログラム構成である。

 さて、お目当ての「小栗」は総出演で、二段の物語を三人で読みあげる。
 初めは金川さん、「お化粧の段」
 小栗判官の物語は時間も世界も想像を絶する壮大な物語でなかなか全体を通して聞くことはない。また部分を聞いても何のことか、よくわからない。
 日本には古くから「語り物文芸」という物語伝承のジャンルがあり、さまざまな人々がそれぞれの手段で都会や地方をめぐっては、物語を語り伝えたものだということである。
土台に仏教の布教があったり、巫女の遊行があったり、人々を集めては興行を催したものであった。
 人々の多くは、生まれ故郷の村を出ることなく一生を終えたのだろう。そこへ見知らぬ他国から、珍しい物語を伝えに来てくれる瞽女集団は、毎年の大きなたのしみだったろうと思われる。語られる話は、身近のことではない奇想天外なものほど面白く人々を引き入れる。さまざまな人々(芸人)の話がいつの間にか合同して更に面白い「はなし」になって行ったものか、「をぐり」の物語は時空を超えて展開してゆくのだ。
 さて、三味線に最初の撥を与えて金川さんの読み。ふしぎの運命がめぐりめぐって、照手姫は今は美濃国青墓という町の廓に下働きをしていたが、廓の主人に頼まれて遊女として初めて客にあることになった。唄は静かに唄い起され、「常陸(ひたち)の小萩」という名を与えられた照手が髪をときさらに櫛を入れながらお化粧をととのえ、衣桁にかかった華麗な衣裳を身につけていくところ。化粧ができて、照手がたどる廓の中、田舎ながら部屋々々の結構に気配りがあって華やぐ一夜のしつらえを読みあげる。私はここが好きだ。部屋ごとに花の名をつけ華燭を飾って漂客の気分を引き立てていく描写がうつくしい言葉で綴られている。且て金沢のひがし茶屋街の廓を見物したことがある。まさにこの段の描写の如く、襖に描かれた花鳥の華やかさ、青墓の廓万屋もこんなところをめどに作られたのだろうか。
 演者は変って室橋さん、物語は続いて、わけありそうな小萩の身の上を推しはかりながら上客に取り入って商売をしくじらないようにオロオロしている万屋夫婦の心境、小萩も心をきめて「判官対面の段」に段取りしていく運びとなった。

 今日の松坂は全巻というわけではない。しかし、この荒唐無稽というか、奇想天外というか、あの世この世を自由自在に往き来する壮大な物語の一端を知るのみだが、まさに春の瞽女唄、春仕事のはじまる前におなじみの瞽女サンが語ってくれるふしぎ世界の物語が人々の心をゆさぶる一刻ではなかったか。

 風の強い、桜も散りいそぐかのような四月も下旬の一日、終りはたのしい謎かけと、勢いの発ち唄で元気をもらった。

→ 第11回春の瞽女唄公演をお聴きください。

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